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ジェレミィはそっと双銃を円陣の中心に置いて問う。
「壊さない?」
『壊れるものか。………かなりの業物だな、如何様にして手に入れた?』
「……パパの形見。"デウス=エクス=マキナ"って名前」
『ほう………"機械仕掛けの神"とは、酔狂な名を付けるものよ』
銀色の大型双銃を品定めし、アルウェルは呟く。
『小僧が使うには勿体ないな』
「どういう意味だよっ!?」
『汝、魔力弾を撃ち放てるかえ?魔法による属性変化』
「…………パパは殆どの属性が使えた。俺は、風と雷以外全っ然才能無くて………」
言い訳気味にジェレミィは答えた。
『ふん、まだまだよな。さぁ、契約を始めようかね』
アルウェルは肉球に傷を付け、ぽた、と血を陣に垂らした。
魔法陣が鈍い輝きを放つ。
『―――我が名はアルウェル、誇り高きスフィンクスの一族
彼の、ジェレミィ=マクスウェルの招きに応じ我が力貸し与える事を、我が血と真名にかけ今此処に契約する』
一際強い光を放ってから陣は消えた。
慌てたのはジェレミィだ。
「おい、いいのかよっ!」
『何がだ?』
「血の契約までやっちまって。契約違反をしたら死んじゃうじゃないか!」
魔族の血の契約は、時に魔族の命を奪う。
違反を犯せば、その瞬間血の魔力に躯を壊されて死ぬ。
『地雷を踏まねば良い事よ。小僧はそこまで頭が回らなさそうであるしな』
「どーいう意味だよっ!」
『同じ事を二度も口にして。恥ずかしくないのかえ?』
「あ゛…………」
ジェレミィが意味不明な呻きを上げる。
黙ったジェレミィにアルウェルは双銃を投げ返した………が。
「あぎゅっ!!」
『………』
双銃のグリップが見事に頭に直撃し、なおの事意味不明な呻きを上げた。
『まったく、小僧はちっとも飽きぬのう』
再びアルウェルはからからと笑った。
「痛てぇ………」
頭を抱えながら銃を拾ったジェレミィは、銃が若干重みを増している事に気付く。
三年使って漸く慣れた重みだ、0.01グラム減っていようが増えていようが絶対に気付く。
それがたとえ、弾倉が使いかけで弾数が減っていようと何発残っているかも解る。
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