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今まさに唇と唇が重なるという、その絶妙なタイミングで誰かがボクの名前を叫ぶ。
「え?」
そこに立っていたのは、
「ま…ママ!?」
何でママが!?
「卓郎起きなさい!」
遠くで目覚まし時計の音が鳴ってる。
彼女の姿が消えて行く。
目を開けるとそこに立っていたのは彼女ではなく、ママ。
「卓郎、会社遅れちゃうわょ。」
夢かぁ…。
まぁ夢になってもおかしくはない。ボクは寝ても覚めても彼女のことを考えてしまう。
そういえば夢に出てきた相手は、相手も自分のことを考えているから夢に出てくるらしい。
まぁ、ボクと彼女は『運命の人』だからな。彼女が夢に出てくる=彼女もボクのことを考えてる…
当然のことだろう。
ボクは朝食を済ませ、スーツのズボンを履き、ママが出しておいくれたワイシャツを着る。
(いつかは彼女が出しておいたワイシャツを着る日が来るんだなぁ…)
なんて考えたら、顔がニヤける。
「なぁに?ニヤニヤしちゃって。ママが買ってきたワイシャツそんなに気に入った?」
「ん?ママにワイシャツ買って貰うのも、そろそろ終わりかなぁって思ってさ。」
「え?なにそれ??」
「ん?う~ん…行ってきます」
ママにはボクが運命の相手に会ったのはまだ内緒だ。
ボクは会社までの道のりを今までになく軽い足取りで歩く。
ウキウキする。
は~恋ってスバラシイ!
なにもかもが輝いている。
なにもかもを許せそうな気持ちだ。
会社の女子社員たちに何を言われても彼女の笑顔を思い出せば、怒りもおさまる。
これが愛かぁ…。愛とは、なんて寛大で偉大なものなんだろう。
でも彼女の名前は?
住んでる場所は?
ボクはなにもかも彼女のことを知らない。
コンビニに行かなければ!
彼女をもっと知りたい。
でも話しかける勇気は、
…ナイ。
ボクは奥手だからなぁ。
でもコンビニに通い続けてれば彼女から話しかけてくるだろう。
彼女もボクに好意を持ってる。
なによりボクたちは
『運命の恋人』
さぁ、彼女が待つコンビニへ行こう。
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