プロローグ

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  「あぁ~、なんというかなぁ・・・・・・あいつは本質からしてガキなんだよな・・・・・・部長、情操教育間違ったんじゃないッスか」  正気を保っている僕ら数少ないメンバーの一人、成瀬 音【なるせ いん】さんは頭をガシガシと掻き、ため息まじりに呟くと、少し前で彼女を見上げている女性を軽く睨みつけた。  長身であることもあって、それなりに迫力というか威圧感のようなものがあるのだが、彼女は涼しい風でも受けているような表情を見せる。 「フフッ・・・・・・良いことじゃないか。子どもっぽいということは純粋だということと同義なのだよ。我々はそれをこそ慈しむべきだ。そうは思わないかね?」  彼女のすることなら、ほぼOKというスタンスの部長は、うっとりした表情になり、静かに両目を閉じた。一歩後ろに下がる。 『最後まで聞きなさい』  身を引いた直後、部長はそう言った。するとつい一秒前・・・・・・いや、コンマ一秒前まで僕が居たところまでが部長の“独壇場”と化した。  隣では、僕と同じように危険を感じて、あらかじめ退避していたらしい布団巻――もとい茅夏【ちか】さんが、部長の一番近くにいたおかげで逃げ遅れてしまった音さんに哀れみの目を向けていた。 (まぁ、正確には向けているようだ。と言うべきなのでしょうが)  部長の独壇場に捕らわれた音さんは虚ろな目で部長の論説を聞いているのだが、今はもっと優先度の高いことがあるため無視させてもらう。 「茅夏さん、どうしましょうか」 「私個人の意見としては、いつも通りの対処を行うのが最適と思うです。今回は周りの設定は観客で固定されているようなので、そっちの対処自体は問題ないと思うです」  詳しく聞かなくても欲しい意見を全て言ってくれた。この理解力と無駄のなさは本当にありがたい。 「残念ながら僕も同意見です。出来ることなら代案が欲しかったのですが・・・・・・」 「律都くんは自分の特異性と利便性をもっと自覚すべきだと思うです。律都くんの使用は最も確実で簡易的な方法です」  嫌と言うほど自覚はさせられているつもりだ。それでもなるべくなら避けたかったのだが、そうそう上手い話は無いということだろう。 「はぁ・・・・・・」 「ため息は幸せが逃げるです」 「それは副部長に言ってやってください。僕から幸せを奪ってる犯人なので」
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