Chapter1

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四畳半。 それは団地に暮らしていた僕が、子供部屋と称して兄と一緒に使っていた部屋の広さだ。 しかし、二人部屋だからといって、そのまま綺麗に二等分されていたかというとそうではない。 兄とは七歳も離れていた。 この七年という歳月は広く、大きい。僕が物心をつく頃には、兄のための兄が使いやすいように部屋の間取りはなされていた。 僕の立場は同居人ですらなく、日本に働きに来た海外労働者のようだ。 勉強机や本棚は使わせて頂くという謙ったものであり、辛うじて二段ベッドの上部にだけ自分のスペースがあった。 それでも、わずかではあったが自分の場所というものがあったので我慢はできた。 しかし、洋服はそうはいかない。 うちの家は経済的に苦しかったわけではないが、あるもので済ませる生活をしていたので、僕の周りにある物は兄からのお下がりであった。 したがって、僕が着ている服は何年も前の流行物。兄は服装に関して無頓着であったため、非常に格好悪いものがいつも僕の手元に残った。 親に文句を言ったが価値観が違うのだろう。 わかってはくれることはなかった。
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