Chapter1

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歳を重ねるに連れ不満が膨れあがっていった。 兄が大学に進学すれば、就職してくれれば家を出て行くだろう。 半ば祈るような心境だったが、人類平等を謳う神様は僕の願い事だけ叶えてくれることはなかった。 僕が大学受験を決心したとき、兄は流行のフリーターになって未だに家に居着いていた。 就職難という厳しい現実に対し、逃げずに立ち向かうようならば救いようがあるが、兄は眼を逸らすようにハローワークへ通うことを拒んだ。 その上、バイト先でことある毎に店長やバイト仲間と喧嘩をする始末。 状況を打破するには、僕のほうから出て行くしかないのは明白だった。 大学を選ぶ規準として、自宅通学ができないくらい遠く、それでいて文句を言われないような高学歴の大学を選んだのは自然の成り行きだったのだろう。 参考書とシャープペンシルを持って、勉学に勤しんだ。 そんな努力のかいがあったのか、国立の第一志望は色気を出しすぎて失敗はしたけど、とある大学に進学することが決まった。 自分が決めた条件をすべてクリアした上で、一人暮らしをするためのプランを両親に提出する。 初めは反対をされるかと思ったけど、いいんじゃないの、と簡単に肯定されて、少しだけ肩透かしに感じた。 でも、嬉しかった。
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