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少し猫背気味の背に、
ボサボサの頭。
いつも薄汚い格好に、
臭いのきつい煙草。
「好きよ。」
重心が前にある背中に、ギリギリ届かないくらいの小さな声で呟いて、
こつん。と小さくブーツの爪先で男の足を小突いた。
振り返る顔に、何もないわ。と冷たく返して、
今度は大きくて、ヤニの臭いの染み着いた背中に顔を埋める。
まだまだ甘えたい盛りの子供だと思われているのだろう。
一度、一瞥を向けただけであとは特に気にした風もなく、黙々と新聞を読み進めるだけだ。
悲しくなる。
ちょっとくらい動揺したっていいのに。
好きよ。
世界中で1番。
好き。
子供だから。なんてあしらわないで。
こっちを向いて。
強すぎるヤニの臭いにも、
頭の眩む煙草の煙にも慣れたわ。
子供なんかじゃないの。
だからねぇ。
少しだけこっちを向いて。
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