……何だそれ。
俺は力無く笑う。
グラスを口に持っていき、晃司のウンチクやら理想論やら俺への助言めいたものやらを聞きながら、意識だけほんの少し席を外させる。
ぼんやりと浮かぶのは、橘の笑顔。
続いて不機嫌な顔、泣き顔、無表情。
犬みたいな懐き方、猫みたいな離れ方。
そしてわかりやす過ぎる素直さ、向こう見ずで無鉄砲な真っ直ぐさ。
迷惑千万の中に仄かに生じる、
……想われる心地良さと相手に対する愛着と可愛さ。
……ああ。
だから言いたくなかったんだ。
……怖かった。
こうやって第3者から言われることで、無自覚なふりをしているのを自覚してしまうのが。
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