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しんと静まり返った調理室に、突然女性の叫び声が上がった。
「うわぁーん!」
続いて、物騒な音が、包丁をまな板に叩きつける音が聞こえる。
「物に当たるなよ」
広い室内にただ一人いる女性に、出入り口から顔を覗かせた男性が呟くように声を掛けた。
ついで、手に持っていた袋を顔の横に持っていき、言葉を添える。
「差し入れ持って来たしさ」
「何?」
一応、包丁を正しい位置に置き直した女性は男性へと近づいて行く。手に、何かを持ったまま。
だが答えを聞いた途端、その足を止めてしまった。
「りんご」
「いらない」
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