『うさぎりんご』

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「……一応、特技だから」  りんごのひとつを男性がうさぎりんごにしていくのを見ながら、女性は呟くように応える。  途端に、くすりと小さな笑い声が零れた。 「切れ味で味が変わるからな」 「でも」 「はい」  女性が何か言いかけるのを、止めるように男性は女性に自分が作ったうさぎりんごを差し出す。  背筋がきれいなうさぎりんご。 「もし、時間内に出来なかったらそれ出して再々試を免れなさい」 「そんなこと出来るわけないでしょ!」  子供に言い聞かせるような言い方に、女性はむっとした声で文句を言う。  実際、出来るわけないし、男性の方もそれを分かっているだろう。笑ってごまかす。  女性も、つられたように笑ってしまう。
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