『うさぎりんご』

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「まあ、適当に頑張って。俺は図書館で勉強してるからさ」  時計を見て、手に持っていた袋を女性にではなく調理台に置きながら言葉を続ける。 「あ、失敗作あまったらおやつに頂戴」 「もうしませんよっ」  猫みたいに威嚇しながら、女性は男性を追い払う仕種をする。  そんな姿を、男性は笑いながら見ていたが、もう一度時計を見ると女性から数歩離れた。 「じゃ、頑張って」  そのまま立ち去って行く。その際、手に持ったままだった女性のうさぎりんごを食べ始めながら。 「ああ、やっぱり。切れ味いいから、うまい」  その言葉を聞いた途端、女性は男性を呼び止めていた。 「……ありがとう」  男性はそれに微笑みで応えると、現れた時同様の場に、戻してしまう。    ―  おわり ―
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