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俺の生まれた所は、いわゆる夜の街が駅前にいくつかあるだけで、周りは山に囲まれて比較的自然が多かった。
だから小さい頃は泥だらけになるまで走り回って、子供ながらに秘密基地なんて作ってさ。
夜はその秘密基地から空を見てるだけで面白かったんだ。
屋根なんかない、名前だけの秘密基地から夜空を見上げると、空には宝石みたいな光があったから。
満点の星空の中で、みんなで騒ぎながらどれが一番綺麗かなんて答えの出ない会話をしてさ。
小さくてよく見ないと見えないけど、その中でも一際優しくて、綺麗に輝く光を俺はいつも見上げてた。
そして、大きくなったらあの宝石を取りに行くんだってずっと言ってたんだ。
今思えば、ただの子供の戯言だったけど、本気でそう思ってた。
ずっとずっとあの光がいつか手に入るって信じてた。
……今の俺には、宝石なんて見つける事さえ出来なくなってしまったのに。
いつしか偽物の光に囲まれて、それが当たり前になってしまったから。
自ら光から目を逸らし、偽物の光で誤魔化してしまったから。
それでも幼い頃の思い出より、綺麗で優しく輝く光を手にいれたくて……。
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