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もう時間は深夜。
いつもと変わらない喧騒。
本当にこの街は、世間一般で言うところの平日休日なんて棲み分けも、深夜と言う言葉も。
何も意味を持たないんだな、とうんざりしながら思う。
「お願いミコ」
「えぇ、またあ?ちょっと、大丈夫なの?」
そんな自嘲にも似た考えをかき消した同僚の声。
口では諌める様にそう言いながらも財布へと手が延びてしまう。
ほとほと佳奈には甘いな、と自分でも思う。
「大丈夫だってぇ!またいきなり呼ばれちゃってさー。ありがとミコ、愛してる!」
「大丈夫ならいいけどさ」
実際、佳奈は私からお金を借りたら翌日にはしっかりと返してくれる。
お金の貸し借り自体を肯定する気はないし、人によっては私のしていることはただの甘やかしなんだと思う。
ただ私にとってお金にはそこまでの価値は無くて、佳奈が困っているなら別にいいか、と簡単に考えてしまう。
それに佳奈はこの店のナンバーにも入っているし、それもあってかあまり心配はしてない。
うちの店は客層もよく、ナンバーに入れば他の店では手に入らないような額がもらえると有名だから。
まぁその分ノルマや接客に対する店の方針が厳しいのだけれど……。
佳奈の声で一瞬かき消された自嘲も、またそんな物思いにふけり、少し気分が落ちてしまう。
はぁ、と小さく溜め息を吐き、鞄からタバコを取り出し火を点けた。
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