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「カメ、乾杯しよ!はい、おっつかれーー!!」
ガチッ、とジョッキを合わせると。
「…ちょっ、早っ!」
一気に半分くらい生ビールを喉に流し込むコウキに慌てた。
「だーって、カメとサシ飲みってあんまやんねえじゃん!だから今、ちょっとテンション上がってっからね、俺!!」
そう言ってまた、ジョッキを口に運ぶコウキを見て、笑いながらビールを飲んだ。
店が終わってから、連れられたのはきのう中丸たちと来た店の向かいに立つ居酒屋。
昼間の宣言通りに、コウキに飲みに行こうと誘われて、いま。
「そういえばコウキと二人でって、あんまないよね。いっつもさ、中丸と3人で行くってパターンが…って!コウキ!」
開始から5分も経たない間に、すでにコウキは2杯めをオーダーして飲み始めていた。
「ヤーバイ!今日けっこう飲めそうかも!朝までコースとかいっちゃう?!」
コウキは酒が弱いワケじゃないけど、飲むとすぐに首まで赤くなるから。
一緒に飲んでると、大丈夫かなって心配したりする。
…しかも2杯め、焼酎頼んじゃってるし。
あんまり色々飲まないほうがいいと思うんだけどなあ。
「俺は明日早出だから帰るけど、コウキは朝まで飲んでていいよ?」
ニッコリと冗談ぽく言えば、ひでー!って大笑いするコウキ。
そのままピッチは変わらず、焼酎のグラスもすぐに空いた。
「なあー…なんでカメは彼女作んねえの?」
ほろ酔い、というには赤過ぎる顔で、だけど割としっかりめな口調でぶつけられた質問は唐突だった。
「…っえ、何、いきなり」
終電まであと1時間、あと1杯オーダーしたら切り上げようかな、なんて思ってたときだった。
「いや、いつも思ってたんだけどさ、カメってモテるじゃん。なのにそういう、彼女、みたいな話し聞かないし。
好きなヤツくらいはいたりすんの?」
……好きなヤツ、ねえ。
「――いたよ、」
えっ、て目を見開いたコウキには構わずに、俺はそのまま話しを続けた。
「2年くらい、前かな。付き合ってるかどうかもわかんなかったけど。
すごい、好きになったひとがいた。
もうお互い連絡取ってないけどね。――終わったことだから。」
だけど、と続けた言葉が自分への責めなのか、後悔なのか。それとも。
「あのとき手離さなかったらって、いまでも思ってる。
もう傷付きたくないってしてたら、今日まで来てたよ」
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