1358人が本棚に入れています
本棚に追加
大通りに出ると、タクシー乗り場でもないのに、車道脇にはどこそこにタクシーが乗客待ちをしていた。
赤西の、送るって言ってたあれは…俺がタクシーに乗るまでってことでいいのかな。
まさか家まで歩いて送るとかじゃないよな。歩けない距離でもないけど。
こんな寒空の下じゃ凍えて死んじゃう。
つーか、死ぬは大袈裟だけど、普通に風邪ひく。
「あかに…」
「っぁあああーさみい!かめ、あれ!あのタクシー乗ろう!!」
「はっ?!乗るの?!」
お前も?!
「はあっ?!乗んねえの?!おまっ、歩くんか、この寒空んなか!!」
「ちがっ、」
「おら、乗るぞ!!」
そう言って、俺には有無を言わさず近くに停まっていたタクシーに押し込められた。
つーか!!
赤西ん家ってどこ?!
俺ん家の近所とか?!いや、どこに住んでるとか俺言ってないよな!?
なに、こいつめちゃめちゃ金持ちとかなの?
「かめ、家どこ!」
乗り込んだタクシーのなかで、寒さに背中を丸めた赤西に聞かれた。
赤西の声のデカさに、バックミラー越しに一瞬寄越された運転手の視線は冷ややかだった。
「‥あ、ぇ と、桜木町。紅葉坂んとこの大きい交差点渡って。その辺で降ろして貰えれば」
言いながら、赤西から運転手に視線を切り替えた。
煩くしてすみませんという意も込めて。
でも、ほんとに寒い。
かじかむ指を握り込んで、肩を竦めた。
家の近所で降ろして貰って、そこから歩いて帰ろう。
寒いけど、しかたない。
なんか、‥何となく。
「っああー、まぁじ寒かったー!!俺、冬ほんっと無理!嫌い!!」
冬が無理でも嫌いでもどっちでもいいけど(つーかどうでもいい)、お前は声量を考えろ。
「ああー早く春こねえかなあー。あっ!つーか、夏こねえかなあー!!やっぱ夏だなあー」
だから黙れ!
「かめは‥ 」
「赤西、」
見事に被った話し出しのタイミング。
もうなんか、なんだろ。
うん。
俺も夏のが好きだよ。好きだけどね。
って。それが聞きたかったんだろ、お前は。
もうさ、それいいから、ちょっと喋らせろ。
「んあ?!なに?!はい、かめ!!」
はい、ってどうぞの手をされて。
なんかこいつと喋るの疲れてきた‥…まだ喋ってないけど。
.
最初のコメントを投稿しよう!