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「赤西って、どの辺に住んでんの?お前も桜木町とかその辺なの?」
「はっ?!ちげえし」
何言ってんの?!みたいな顔をして、赤西はそれを当然のように否定した。
いや、俺知らないし。お前の家。
「つか、じゃあ俺ん家の方面って遠回りとかになってんじゃないの。大丈夫なの、それ」
俺の心ばかりの心配をヨソに、赤西は悪びれもせずに宣誓した。
「俺、きょうかめん家に泊まるし」
―――は?
「っはぁあああああ?!!!おまっ、ふざっけんなよ!!何だよそれ、聞いてねえよ!!」
「だあって、かめ聞いてこなかったじゃん」
「降りろ!!いますぐ降りろっっ!!!」
「むりーー!!ぜぇってぇむりだし!!!凍え死ぬわ!!!」
「いっぺん、死ね!!!!」
ぎゃあぎゃあ騒いだ社内。運転手がキレなかったのは奇跡だと思う。
降車した瞬間、物凄い音でドアが閉まって、違法なんじゃないかと思うスピードでタクシーは走り去って行ったけれど。
「っだああ!さっみぃい!!!な、かめん家こっから近い?すぐ?!」
こいつにはあの運転手の怒りは伝わってないんだろう。
タクシーのドアが閉まるのがあまりにも降車直後で、俺のあとに降りた赤西のシャツの裾がドアに挟まりかけたのに。
赤西はと言えば、
「あっぶねええーーー!!!なにあいつ!!今度会ったらシバいてやる!!!」
とか何とか叫んでいた。
シバかれるのはお前のほうだよ、と言ってやりたいけど。もう構うのも面倒臭かった。
「言っとくけど、俺ん家こっからめちゃめちゃ遠いよ。お前、引き返して帰った方がいいよ」
「帰りませーん。かめなしくん家に泊まりますー」
「誰が泊めてやるって言ったよ」
「もー、んなこと言って!俺お前の言ってることわかんない♪」
ああー!ムカつく!!
ああ言えばこう言う!!
その内股で歩くのはなんだ!!わざとか!まさか素でやってんのか?!!
「…つかさあ、お前あしたの仕事とか大丈夫なわけ?」
「ん?俺?あー、大丈夫。明日休みだしー。俺よりかめのがやべぇんじゃねえの」
時間、って赤西は自分の腕時計を指す。
その大きめな文字盤に目をやると、時計の針はすでに2時を指そうとしていた。
あしたも早番だ。
あからさまにため息をついて、赤西を睨んでやった。
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