Luv Song.

3/7
前へ
/39ページ
次へ
「赤西って、どの辺に住んでんの?お前も桜木町とかその辺なの?」 「はっ?!ちげえし」 何言ってんの?!みたいな顔をして、赤西はそれを当然のように否定した。 いや、俺知らないし。お前の家。 「つか、じゃあ俺ん家の方面って遠回りとかになってんじゃないの。大丈夫なの、それ」 俺の心ばかりの心配をヨソに、赤西は悪びれもせずに宣誓した。 「俺、きょうかめん家に泊まるし」 ―――は? 「っはぁあああああ?!!!おまっ、ふざっけんなよ!!何だよそれ、聞いてねえよ!!」 「だあって、かめ聞いてこなかったじゃん」 「降りろ!!いますぐ降りろっっ!!!」 「むりーー!!ぜぇってぇむりだし!!!凍え死ぬわ!!!」 「いっぺん、死ね!!!!」 ぎゃあぎゃあ騒いだ社内。運転手がキレなかったのは奇跡だと思う。 降車した瞬間、物凄い音でドアが閉まって、違法なんじゃないかと思うスピードでタクシーは走り去って行ったけれど。 「っだああ!さっみぃい!!!な、かめん家こっから近い?すぐ?!」 こいつにはあの運転手の怒りは伝わってないんだろう。 タクシーのドアが閉まるのがあまりにも降車直後で、俺のあとに降りた赤西のシャツの裾がドアに挟まりかけたのに。 赤西はと言えば、 「あっぶねええーーー!!!なにあいつ!!今度会ったらシバいてやる!!!」 とか何とか叫んでいた。 シバかれるのはお前のほうだよ、と言ってやりたいけど。もう構うのも面倒臭かった。 「言っとくけど、俺ん家こっからめちゃめちゃ遠いよ。お前、引き返して帰った方がいいよ」 「帰りませーん。かめなしくん家に泊まりますー」 「誰が泊めてやるって言ったよ」 「もー、んなこと言って!俺お前の言ってることわかんない♪」 ああー!ムカつく!! ああ言えばこう言う!! その内股で歩くのはなんだ!!わざとか!まさか素でやってんのか?!! 「…つかさあ、お前あしたの仕事とか大丈夫なわけ?」 「ん?俺?あー、大丈夫。明日休みだしー。俺よりかめのがやべぇんじゃねえの」 時間、って赤西は自分の腕時計を指す。 その大きめな文字盤に目をやると、時計の針はすでに2時を指そうとしていた。 あしたも早番だ。 あからさまにため息をついて、赤西を睨んでやった。 .
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1358人が本棚に入れています
本棚に追加