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きっと、赤西はわざと音を立てている。
耳たぶから、首筋へと。
その音を覚え込ませるように、ひとつひとつのキスに、音を立てた。
「…‥ん、んっ」
鎖骨から、胸元へと。
音が、降りていく。
「‥っは、あ‥…」
どうしようもないくらい、高ぶる感情。
「‥…っ じ、ん‥」
その、名前を呼ぶ。
胸元に埋めた顔を、赤西はゆっくりと上げる。
「――‥ ンン っ!」
虚ろぐような視線に捕われた瞬間、噛み付くような、赤西のキス。
掌が、腹から胸へ撫で上げられて。
赤い飾りを爪先で引っ掻くように弾かれた。
夢中で、キスを受けた。
赤西の唇の形も、舌も、――音、も。
ぜんぶ、覚えるくらい。
着ていたブルゾンを脱がされて、重ねたシャツなら、肩から滑り落ちて手首に絡んだまま。
Tシャツの裾を捲くり上げられて、指と唇で胸元を愛撫された。
「 ‥…はあっ、アっ‥!」
すでに尖りを持たせた胸の飾りを、舌でぐるりと撫でたあとで、赤西は低く呟いた。
「 声、」
「んっ…あぁっ…!」
「もっと出んだろ」
何か答えようとした唇は、赤西の愛撫に消されていった。
ぷつりと膨れた胸の突起、その尖端を、下から上へ、ゆっくりと押し上げられる。
「 やっ…あ っ」
不意に舌先が離されて、ふる、と揺れた尖端から、快感が背筋を走った。
飽きることなく同じように、見せつけるように出した舌で、今度は上から下へ、紅い突起を緩く揺らした。
「‥はあっ、 んんっ、‥…ふ う、」
頭が、朦朧とする。
それでも自分のなかのボーダーラインがあった。
「‥…ん‥っ、ふっうっ‥」
声を、噛み殺す。
赤西を部屋に上げた時点で、こうなることを予想していなかったと言えば――嘘だ。
なだれ込むような行為も、それに流される自分も。
ホントは全部、わかってた。
だけど、その行為の中で、声だけは、殺して。
快感に呑まれて、声をあげる。
――それは、自分のすべてをさらけ出してしまうということと同じで。
流されても、心はゆるさない。
この関係は一晩限りのものだと。それ以上のものを勘違いしないために。
奥歯を噛み締めて、このボーダーラインを保っていた。
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