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――カチャリ、とベルトが外された渇いた音がした。
同時に、キスを重ねた赤西の唇が離れていって。
一纏めにされた手首がゆっくりと解放される。
流れるように、首筋にひとつ。
音を立ててキスをすると、俺の肩に額を預けた。
上がる一方の呼吸を肩でしながら、赤西は思い出したように言った。
「‥…ブーツ、これ。めんっどくせえぇ‥」
赤西のうなだれるその姿に、濃色に流れていた空気がゆるく、纏いを変えた。
一瞬の放心のあと、俺は込み上げる笑いを堪えはしなかった。
「‥おまえが途中で邪魔したんだろ、しらねえよ!」
ムードとか、そういうのとは違う空気が流れてるのに。
「かめが、んなの履くからさあ…」
「ばぁか」
汗ばむその髪に指を絡めて。
赤西を引き寄せて、自分から、キスをした。
不覚にも、愛しいと。
――想ってしまった。
長いキスの間にブーツの紐は解かれて、赤西は少し強引にそれを脱がせた。
――どうして、と思う。
割り切った関係。身体だけだ、と。
自分で決めるのに、いつもそうじゃなくなる。
本気になんか、なっちゃいけないのに。
自分じゃ、もうどうにもならない。
俺の上顎を何度も愛撫した赤西の舌。
唇を離すと、嫌らしい糸を引いて。
もう一度戻ってきた唇が、チュッと音を立ててそれを搦め捕った。
舌が徐々に降りていき、辿り着いたのは反り返る雄の欲望。
その先端に口づけると、赤西はそれを軽く口に含んだ。
それから、きゅっと唇で吸われて、零れそうになった声を何とか呑んだ。
「…‥なんで我慢すんの、声」
「‥っは、 ん…っ、いいだろっ、っ‥な、んでも…」
これ以上、自分を見失えない。
快感は自分のなかでだけで感じて。声にはしない。
これ以上、お前に嵌まんないように。
「声。出さねえの?」
「‥…も、い、から‥っは、つづき…っ」
言って、赤西の髪を掴んでいた指先に、ぎゅっと力を込めて行為を促す。
それに応えるように、また口に含み直して、一度だけきゅっと唇で絞り上げた。
だけどそれもすぐに離されて、俺は批難の視線を送りつける。
赤西は、でもダメ、と首を振った。
「‥じんっ、」
呼び付けた名前に、赤西は意地悪く微笑った。
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