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「どうかした?」由美が心配そうに尋ねる。
「いや、大丈夫。まだ少し頭痛がするんだ。でも大したことない」
「あたし達大切な何かを忘れてる気がするの。でもそれが何かはわからない。すごくモヤモヤする」
大切な何か・・・。そう言われても俺には何も思い当たらなかった。そこで俺は、今日の保健室での出来事を話した。
「関係ないかもしれないけど、実は今日、森沢さんが出た後、窓の外から鷹がじっとこっちを見てたんだ」
由美の顔色が変わった。
「鷹・・・あの人、ヤバイ」
「あいつやっぱり関係あるの」
「えっ。ああ・・・今のとこ不明。でもあの人、ヤバイ」
頬の大きな傷。冷酷な目。鷹には表情が欠落している。あれは獲物を追い詰める文字通りの鷹だ。今日の記憶が甦り、鳥肌が立った。
「鷹に近づいてはダメ。どんな関係があるかわかんないけど、あたしの直感は、鷹に対してあまりいい感じじゃない」
鷹・・・何者だ?
「ね、島崎君。ちょっとお願いがあるんだけど」
「ん?」
「今日あなたの前に杉本さんが現れたでしょ」
「ああ、本当に気味悪かった。ああいうの勘弁してもらいたい」
「その気持ちよくわかるんだけど・・・」
嫌な予感がした。これから由美の言うことが何となくわかった。耳を塞ぎたくなる。
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