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「そこ」にはどす黒い流星の屑のようなものが渦を巻いていた。その屑が必死に何かを呻きながら、離合集散を繰り返している。
寒かった。
限りなく絶対零度に近い空間を怨念を纏った思考の残留が蠢き、犇きあっていた。
気を抜くと俺も持っていかれてしまう。俺は意識を頭だけに集中させた。微かに声が聞こえた。俺はその声の糸だけを目がけて意識の矢を飛ばす。
長瀬京子の声が俺の頭の中で反響した。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い
ヤバイ!と俺は思った。長瀬京子の声は、俺の意識の糸に絡まり、もつれ、俺の意識をもみくちゃにした。意識が下降していくのが感じられた。俺の意識は必死で這い上がろうとするが、長瀬京子の声が、俺の意識が上がるよりも早く、蟻地獄に落ちる砂のように下へ下へと落ちるのだった。
持っていかれる!
そう思った瞬間。バァンというけたたましい音ともに視界が真っ白に光った。
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