scene4 約束

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しかし、校長の言ったことは混乱を招かないための嘘で、鷹は本当は証拠不十分で釈放されたのだという噂がどこからともなく立っていた。警察はまだ諦めたわけではない。そうも言われていた。だが、鷹の周りに警察の影はなかった。どこかで見張っているのか。 「鷹はヤバイ」由美はファミレスと同じ事を言った。 「鷹からはとてつもない負のエネルギーを感じるの」 「一体・・・何者なんだ?」 「分からないの。鷹は、相当高い壁で自分の意識をプロテクトしてる。あたしでは中に入り込めない」 由美の言葉はしばしばとてもSF的だ。小説かアニメの中でしか聞いたことの無いような台詞を真顔で口に出す。だが、由美によれば、それはごくごく基本的な事柄に属すことなのだという。俺くらいの霊能力を持っている者ならば誰にでもできる類のものなのだそうだ。ファミレスでも言われたように、俺がそれをできないのは、俺が霊的なものに心を完全に開いていないからだという。こちらが信じなければ、向こうも絶対に信用しようとはしない。俺が長瀬京子の思念読みに失敗したのは、まだまだ俺の心の開放が足りないからだと今朝、由美は俺に説明した。 「ね、島崎君。これからあたしが言うことを真剣に聞いてくれる?」 熱のこもった眼差しで俺を見つめ、由美は言った。もちろんだと俺は答えた。 ゆっくりと穏やかな口調で、由美は言葉を出した。 「あなた、きっと傍観者ではいられなくなる」 しばらく意味が分からなかった。もうすでに俺は、杉本百合や長瀬京子による被害を十分に受けていた。そのような意味ではすでに俺は傍観者ではない。だがきっと、由美の言いたいことは、それよりももっと重大な内容なのだろうと、彼女の声のトーンから薄っすらと察せられた。 「俺が・・・つまり・・・狙われるってこと?」
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