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scene1 第二の殺人
「うぉ!」
と俺は素っ頓狂な声を上げた。皆が一斉に俺の方を向いて笑う。
だが、俺はそれどころではなかった。
「島崎黙れぇ!」
担任で数学教師の熊(ニックネーム)が鬼のような形相でこちらに駆け寄ってくる。別室へ呼ばれた。
「貴様 どういうつもりかぁ!」
熊の怒りも最もだった。全校生徒が一同に介する朝礼。しかも今日は、先日殺害された杉本百合の追悼集会でもあった。
さらに悪いことには黙祷の最中と来ている。けれども、俺にはどうすることもできなかった。目を開けると、当の杉本百合が俺を真っ直ぐ睨んでいたのだから。彼女は血まみれだった。学年で1、2を争う美女と名高かった面影はどこにもなかった。彼女には鼻がなかった。口は両耳のところまで深く切り裂かれ、切り裂かれた口からは、薄皮だけでかろうじてつながれた舌がだらりと垂れ下がっていた。
まだ、頭痛と吐き気がする。熊の小言など全く耳に入らなかった。
1時間目は、最悪だった。古典の女教師蛇(ニックネーム)はただでさえ俺を目の敵にしているのに、今朝の出来事でいつもよりもさらに虫の居所が悪く、俺を集中的に当てた。全然答えられなかった。というよりも答えられる状況ではなかったのだ。俺の目の前には杉本百合が立っていて、恐ろしい形相で俺を睨み続けていたのだから。
「こんなのもできないでどうするの?」
オールドミスがそう叫んだとき、百合はふっと消えた。
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