scene1 第二の殺人

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そう二人目だ。杉本百合から遡ること3ヶ月。長瀬京子が殺された。この事件は、俺達の街では、いや、恐らく全国的にも大きなニュースとして取り上げれた。それから半年も経たないうちに、同じ高校に通う、高校3年の女子が再び殺された。今や、俺達の街は世間の耳目を集める日本の中心になっていた。最近では「連続猟奇殺人か!?」と連日の報道で騒がれている。 というのも、殺害の手口-両手両足を縛りつけ、鼻を削ぎ、口を耳元まで裂いて、舌を切り取る-が二件とも全く同じだったからだ。 ぼんやりしていると、 「ね。あたし森沢由美。あなた11組でしょ?」 「うん。俺は島崎徹。君は・・・」 「あたし3組。よろしくね。ねぇ・・・」と、そこで由美は声を細めた。 「実はあたし、個人的にこの事件を調べてるの」 「え!?調べてる?」 しっ!と由美は俺を制して言う。「大きな声出しちゃ駄目」 「ああ・・・ごめん。つい。その・・・びっくりしちゃって」 「実はね・・・」と言いかけたところで由美はベッドを飛び降りた。 「ごめん。あたしもう行くね」 そう言って、駆けるようにして、由美は保健室から出て行った。と同時に、俺は窓外に強い視線を感じた。用務員の鷹(ニックネーム)が、鋭く睨んでいる。頬についた大きな傷。冷酷な目つき。身震いがした。鷹は、つい1ヶ月ほど前にうちの高校の用務員として働きだした男だが、すこぶる評判が悪かった。生徒が校内の備品を壊したとき、無言のまま1時間近くも暴行を加え続けたとか、夜、学校に忍び込んだ生徒の数名が、鷹がニタニタしながら猫の死骸を喰っていたのを見たとか、いずれも事実無根なのだが、その風貌と振る舞いからその手の噂には事欠かない男だった。今ではどこからともなく、長瀬京子と杉本百合を殺したのは鷹だという噂が流れている。 鷹はじっと俺を見つめている。その時、2時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。俺は、それを合図に逃げるようにして教室へ戻った。
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