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「なーんて、あたしだって大したことできるわけじゃないんだけど」
俺は、自分にそんな事ができるなんてちっとも思わなかった。
「俺は出来る限り、そういう手のゴタゴタは避けたいなあ。ね、それよりさ、事件のこと、森沢さん何調べたの?」
「あたしね、実は昨日2人と話をしたの、」
「2人って・・・」
「そう長瀬さんと杉本さん。話すって言っても人間同士がするようなんじゃなくて・・・何て言うか、2人の思念をあたしが拾い上げて声を聞く。そんな感じ」
隣の客が、不思議そうに俺達を見ていた。会話が聞こえているのだ。確かに由美の話は、端から見れば、ちょっとオカシイ者の発言にしか聞こえない。話を聞いている当の俺でさえ、信じられないくらいだった。
「森沢さんちょっと声を落とそうよ」俺は由美に隣に聞こえてるぞ、と目で合図を送った。
「それで2人は何て言ったの?」
「『これは復讐だ』」
「復讐?・・・一体何の」
「あたしにもわかんない。思念を拾い上げるのって、結構時間かかるんだよね」
「じゃあ他にわかったことは?」
「『あの事件』。確かに2人はそう言った。ねえ、あたし達の学校ってなんか事件あった?」
「俺の記憶にはないなあ。ウチって大体が牧歌的な学校だよね」
「そうねえ。ただ・・・何か引っ掛かるの」
事件・・・俺は過去の記憶を辿ってみる。しかし、思考はすぐに中断された。まだ、今朝の頭痛の余韻が残っていた。
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