友人からの電話

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私が典子を生んだその年、聡美は結婚した。 新居として選んだのが本当に偶然の出来事だったが、私達の住む町だった。 「スープの冷めない距離というのはこの事だね」 と、私も聡美も喜んだ。 しかし、新婚生活は切ないものがある。 なぜかというと、いつも一緒にいたいから・・・ 結婚すればもっと長い間居れるだろうと一緒になるのだが、現実には夫を会社に送り出してから帰るまでの待つ時間がとてつもなく長く感じる。 まして、仕事から帰ってきても疲れているのかすぐに横になって会話もないのだ。 聡美は寂しくて仕方ないと、嘆いていた。 そして、その穴埋めのように毎日、私の所に来ては典子を可愛がってくれた。 元々気心しれた私にとって楽しい毎日だった。 たぶん聡美も楽しんでいてくれただろうと思う。 その上、聡美には子供が出来なかった事もあってか典子を本当に可愛がってくれたのだ。 そのせいか、遠い親戚より身近にいた聡美は典子にとっては歳の離れた兄弟のように親しんでいたのだ。 だから、東京に行くとなった時の典子も聡美も寂しくて見送りの時抱き合って泣いたほどだ。 私は、この二人を見て子供に親友を、親友に子供を取られたような気分だったのを覚えている。 典子の「私が行く」の一言で、 その時の感情が又蘇って来た。 「だめよ!典子学校でしょう?」 典子は、私の心を見透かしたように私の顔を覗き込んで、 「ヤキモチ?!聡美ちゃん取られちゃう?って思った?」 「そんな事思わんわ!あほ!」 少し、図星かなとも思ったが、典子はかまわず言葉を続けた。
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