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「ねえ、おばちゃん?起きて!」
子供の声で、いつも間にか寝てしまっていた私は起こされた。
「ん?何?」
疲れと夜中の十二時を回っているのだから眠くて仕方無かった私は、ぼんやりと目を開け子供の声を遠くで聞いているような感じで聞いていた。
しばらく寝ぼけていたが、小さな手が私の太股に置かれて揺さぶってくる。
「どうしたの?」
私の声で、小さな手は、私の太股をぎゅっと握ってきた。
その痛みで本当に目が覚めた私は、その子の手を自分の手で握りなおし子供の顔を覗き込むように見た。
その子は一緒に乗り込んだ黄色いリュックサックの男の子だ。
大きな怯えた目をしていた。
怖い夢でも見たのだろうか?
今にも飛びつきそうな勢いだ。
私は、その子の手を離すと抱っこして自分の膝に乗せて
「怖い夢見ちゃったん?」
男の子は、私にしがみついて頭を振った。
そして、耳元で、
「このバス変なんだ・・・」
「何が?変なの?」
「僕・・・この人たち見た事あるねん・・・」
「知ってる人がいるの?」
私は、男の子の顔を両手で挟むようにまじまじと見つめ返した。
相変わらず大きな目をクリクリさせて怯えながら首を振っている。
「知ってる人じゃない。」
どういうことだろう?
私はわからなくなってしまった。その時、バスの外から
『ドン、ドン、』と音が聞こえた。
外を見ると花火が綺麗に上がっていくのが目に入ったのだった。
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