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「夢やないって!わかった?」
私が頼りにならないのがわかったのか、男の子はさっきの怯えた顔ではなくなっている。
しっかりとした男の顔だ。と思った。
「あっ・・・ほんまや・・・ごめん・・・でも、痛いわぁ・・夢・・・ちゃうねんなぁ・・」
「おばちゃん!しっかりしてえなぁ・・・僕、どうしたらママのとこに帰れるん?」
「そんなん言われたかって・・どないしょう!?」
私は、男の子を抱きしめながら辺りを見回し、後ろを振り返った時一緒に乗り込んだサラリーマンの姿が目に入った。
私は、目で促すと男の子を自分の席に座らせ、サラリーマンの方へ向かう。
バスは、普通のバスのように揺れていた。
私は、初めて歩く吊り橋のように一歩、一歩、乗客の顔を確かめながら歩く、よく見ると乗客の顔は青白く生気が無いように見える。
そして、男の子が言うようにどこかで見たような顔が並んでいた。
サラリーマンの男の人は、余程疲れているのか、ぐっすりと眠り込んでいる。
二人がけの通路側に座っていたので肩を揺すって
「あの・・・起きてもらえませんか?」
男は、すぐに目を覚ました。
少しぼんやりとはしているが、すぐに正気に戻ったらしく
「なんですか?」
営業口調で返してきた。
私は、耳元でこの状態を端的に話しだが、男は、さほどびっくりした様子も無く、
「そうですか・・・・」
と、頷いただけだったのだ。
「この状態を貴方は解かっていたんですか?」
「まさか・・・・でも・・・可笑しいな。とは思いましたよ。どこかで見た顔が多いなとね」
「そうなんです!どこで見たんでしょう?私達は、知らない人達だとは思うのに、どこかで・・・」
と、言いかけた時、私の頭中で走馬灯のように、テレビで見たニュースが蘇った。
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