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「ごめんな。それより僕、名前は?」
「竜太!丸山竜太!」
「りゅうちゃんか・・・エエ名前やね。」
と、言いながら私は、周りをもう一度確かめるように見回した。
よく見ると、私達三人以外は顔色が悪いと、思い込んでいたのは違うと気が付いた。
それは、まるでそれは、昔のモノクロ写真のような感じだった。
その上に少し色が着いている・・そんな感じだった。
思い切って後ろの座席の人に、声を掛けてみたが、私という存在が無いように無視されてしまった。
横の座席の人にも声を掛けたが、知らん顔で怯えた顔で座っていた。
「りゅうちゃん?他の人とは喋れないみたい・・・」
と、耳元で言うと、
「そんなことないわ。おばちゃん乗った時、前のお婆ちゃんと喋っていたやん。」
そうだった。
お婆さんと私は話していたのだ。
りゅうちゃんを自分の席に座らせると、私は、お婆さんに近づいた。
お婆さんの横に行くと顔を覗き込んだ。
お婆さんは、他の人と違ってモノクロではなく普通に見えた。
しかし、このお婆さんも私は、テレビの中で見た事があった。
曾孫のお祝いに東京へと行った帰りのはずだった。
覗きこんだ私を見て、
「何か御用ですか?」
と、にこにこしながらお婆さんは言った。
「いえ・・・・ただ・・・あの・・・」
私は、りゅうちゃんをちらりと見た。
りゅうちゃんは、
『早く何か聞いて!』と、言いたげな顔をしていた。
思い切って深呼吸をしてから私は訊ねた。
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