黄色いリュックの男の子

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私は、よくわからなかった。 死ぬのが怖くない? バスジャックされ恐怖の中でいたはずなのだと思っていたからだ。 「どういう事なんですか?死ぬのが怖くないって・・・私には解からない。死ぬのは誰でも怖いと思うし、私は、今も死にたくないと思ってます。それに家族に会いたい・・・」 私は、言葉を言い切らないうちに、胸がつまり涙が溢れ出した。 それを見たお婆さんは、自分の鞄の中からハンカチを出して、私に手渡してくれた。 「貴方は、まだ若いもの・・・家族の事が心配なのね。心配してくれる家族に申し訳ないという気持ちがあるのね。やり残したものが一杯あるんだと思うわ。だから、死にたくないと心から思えるのよ。私のような歳になると、いつお迎えが来ても何も心配する事がないの。やりたい事はやってきたつもりだし、あっ、そうそう、やり残した事が一つだけあったのよ。あの人が亡くなる前に、曾孫の顔を見られないのが残念だって・・・私が、貴方の分までしっかり見てきてあげますよって約束したのよ。それも、果たせたし写真もちゃんとあの人に、見せてあげられるように肌身離さず持っているのよ。本当に、子供達も孫が出来ちゃうそんな歳になっちゃったのよね。貴方も、私の歳になればきっと解かると思うわ。それにね、もう一つ、あの人と約束しててね。私が死んだら迎えに来てくれるって、それが楽しみでね。」 まるで、夢見る少女のように、胸のポケットから曾孫の写真を出し見とれるように笑いながら言った。
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