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「本当に迎えにこれるものなんですか?・・・」
おばあさんは、少し照れながら、
「約束はちゃんと守る人でしたからね。それに、あの人は・・・もう、この近くに来てくれてるんだけど。何かが邪魔しててね。でも、間違いなくあの人は、来ているのよ。」
「どうして、解かるんですか?ご主人が来ている事・・・」
すると、お婆さんは右手で自分の耳をかざした。
「聞こえるのよ『おーい!迎えに来たよ』ってね。
死んでからも私を待っていてくれるなんて、私は幸せ者だわ。
でもね、生きている時は、私が、あの人を散々待ってあげたんですから、これで上手く帳尻が合うというものね。」
肩を軽く持ち上げ『くすっ』と笑った。
私も同じように右手で、耳をかざし澄ましてみたが何も聞こえなかった。
「何も聞こえないですよ。」
「私にだけ聞こえるんでしょうね。」
御主人の声を確かめるように耳を澄ますと笑った。
「やっぱり、私には聞こえるんですから間違いないですよ。」
「しかし、仲の良いご夫婦だったんですね。迎えに来てくれるなんて。」
私は、本当に羨ましかった。
私も、出来ればこんな夫婦になりたいものだと思った。
しかし、この状況ではそれも叶いそうに無い。
どうすればいいのだろうと、途方に暮れていると、何か言いたげな顔で、サラリーマンの男が近寄って来た。
「どうやら携帯も使えないようですよ。」
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