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「とうさん?!早くしないと、かあさん帰って来ちゃうよ。」
朝の七時半、森蔵家は主婦の居ない日々に、てんてこ舞いをしていた。
「ご飯炊いておかないといかんのじゃないか?典子!洗濯機が、さっきからピーピー鳴っているぞ!お前そっち手伝え!」
なかば怒鳴り声の由美の主人(幸一)は、朝から汗だくで掃除機をかけ、洗濯機を回していた。
典子は、いつものペースで、手伝う気が無く、怒らないと動いてくれない。
「かあさんが、居ない時ぐらい動いてくれよ。とうさん、こんな事やった事も無いんだから・・・」
と、愚痴をこぼしながらも、米櫃から米を出し洗っていた。
由美が旅行に出かけて六日間ずっと同じ事を言っていた。
典子が、もっと手伝ってくれるものだと高をくくっていたからだ。
幸一は、始めのうちは洗濯機も、回せなかった。
「おーい!典子、どのボタンを押せばいいんだ?!」
すると、腐れたように
「こんなのも出来ないの?」
と、馬鹿にされた。
洗濯を干すのも手伝ってはくれない。
「お前は、いつもこうなのか?少しはかあさんを、手伝ってやれ!」
「へー・・・とうさんだって今まで、かあさんの手伝いなんてした事無いくせに、えらそうに言わないでよ。ちょっとは、かあさんの苦労知ればいいんだわ。」
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