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「竜太?バス解かる?おじいちゃんは?」
「ママ、今、おじいちゃんとバス探してる。あっ!おじいちゃんが呼んでる。今から乗るからね。」
「バスの中でゆっくり寝るのよ。終点になったら起こしてくれるから、心配しないで寝れるからね。わかった?」
「うん、寝て起きたらママと、パパ、迎えに来てくれてるんでしょう?」
「早めに行って待ってるから・・・何かあったら電話するのよ。」
「じゃ、もう間に合わないから切るね。」
電話が切れてからも、竜太のママは、携帯を握り締めていた。
三年ぶりに会える竜太がどんなに大きくなっているのか、一日千秋の気持ちで、この日が来るのを待っていた。
「貴方・・・新幹線で帰るようにしたほうが良かったんじゃない?」
「そう言うけど・・・竜太は電車や乗り物に乗ると、すぐに寝てしまう子なんだぞ。寝過ごしたりしたら大変だろ?だから、夜行バスにしようって二人で決めたんじゃないか。明日になれば会えるんだ。これからは離れて暮らさなくてもいいんだから、今まで待った時間に比べたら少し遅くなっただけだよ。」
「そうね・・・・これからは竜太と、いつも一緒に居れるんだもの・・・でも、バス大丈夫かしら?」
「ほら、ママの心配性が出てきたな。大丈夫、明日になれば元気なあの子の顔が、見れるから、それより、退院してきたばかりのお前が、心配だ。明日に備えて寝なくっちゃな。」
と、父親は母親を促し床に着いたのだった。
竜太は電話を切った後、お爺さんと走っていた。
そして、バスターミナルで、やっと見つけたバスに乗り込んだのだった。
「おじいちゃん!いろいろありがとう。おばあちゃんによろしくね。僕、今度から一人でもおじいちゃんの所に行けるようになるから・・・・又一杯遊んでね。ポチ、僕の事忘れないでってよく言って聞かせてね。」
竜太の祖父は、目に一杯の涙を浮かべて頷いた。
「お前が居なくなると寂しいな・・・ばあさんも一緒に見送りたいと言ってたんじゃが腰の具合がどうも悪くてな。そうじゃ、これ、ばあさんから預かってきた交通祈願のお守りじゃ、初めての一人旅だから気をつけて帰るんじゃよ。」
と、竜太の小さな手にお守りを手渡した。
竜太が、バスに乗り込むと、すぐにドアが閉められた。
そして、見えなくなるまで何度も二人は手を振っていた。
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