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小さい時から目立たない控えめの子だった美弥子は、会社に勤めだしてからも、誰からも声を掛けられた事が無い。
女子高、短大と、男っ気無しの世界にいた美弥子は、勿論、彼氏ゼロ。
初めのうち友達は、合コンに行こうと誘ってはくれたが、面白みの無い美弥子は、いつも壁の花となるのだ。
そのうち誰も、そう云うたぐいの話は美弥子にはしなくなった。
受付では決まりきった言葉だけで仕事は出来た。
作り笑顔も段々と慣れては来ていたが・・・
ぼんやり広いロビーを眺めながら、
「私は、このままお婆さんになって死ぬだけなのだわ。」
いつの間にかそう思い込んでいた。
そんな時、黒田が食事を誘ってくれた。
黒田は、美弥子の会社でも、一目を置かれる若手エリートと、噂されていた人物だった。
受付譲達の密かに憧れの的だった黒田に食事を誘われたのである。
一部の隙も無い凛とした姿勢、商談の際でも食い下がる事の知らない黒田は、頼もしい男性と、誰の目にも映っていたに違いなかった。
強引とも思われる誘われ方でもしない限り、美弥子もその誘いには乗らなかったのだとは思う。
美弥子は、自分には無い行動力に、美弥子にだけ見せる子供のような笑顔に惹かれていきトントン拍子に結婚となったのである。
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