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結婚して始めのうちは、海外から帰ってくると喜んで美弥子の作る物を食べてくれていた。
いろんな話を次々と話してくれる黒田は優しく、主張が長引けば毎日電話をしてくれるマメな一面も・・・・
内容は覚えてはいない。
たわいのない、そんな話が美弥子には幸せだったのだった。
しかし、黒田の両親が事故で二年前亡くなってから、少しずつこの生活が変わり始めた。
一度に両親を無くしたショックから黒田は、中々脱出出来なかったのである。
美弥子は何度も、
「私に言って気持ちが楽になるなら・・・」
本当に心配だったからこそ言った言葉だった。しかし、
「お前に、俺の気持ちなんか解かるものか!」
と、怒鳴られたのだった。
黒田は、人には弱い所を見せない。
両親が、亡くなった事で自分がイライラしているとは認めなかったのだろう。
そんな夫を只、何も出来ず見守る事しか出来ない美弥子は、夫の心の支えになれない自分を情けなく思った。
でも、どう接したら良いのか解からず、まるで、腫れ物に触るような気持ちで、黒田に接してしまうようになっていた。
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