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聡美は、高校の時から懸賞を出すのが好きな子だった。
あれから三十年、私達も、もうすぐ五十に手が届きそうな歳になっている。
聡美は、子供が居ないので結婚してから余計に懸賞を出す事に燃えているようだった。
勿論、今まででも、色んなものを当ててはきたのだが、海外旅行という大きな物には当たった事がなかったように記憶している。
だから、歓喜極まるのも無理はないと私は思った。
「よかったねぇー。一杯出した甲斐あったやん。ご主人と行くんやろ?」
「それそれ!あかんねん。旅行の日程が平日やねんわ。だから、由美一緒にいかへん?」
聡美のご主人は栄転で東京本社勤務になったのを思い出した。
忙しくて平日に休みなど取れるわけがなかったのだ。
「えっ?私か?」
「あたりまえやん!他に一緒に行きたい友達なんかおらんわ。
東京に来て二年はたつけど子供もおらんから友達になる接点がないもん。なぁ~一緒に行こうなぁ~。」
高校の時から聡美は甘えた声で人を誘う。
この歳になってもそれが、可愛いと思ってしまうのは高校の時から二人の間では時間が止まっているからかもしれない。
「うん・・・とにかく考えとくわ。旦那にも相談したいし、子供にも聞いてみんと・・その日いつなん?」
私は、聡美の言う日程を紙切れに書き込んだ。
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