母親

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俺達は遊の病室へ向かった 382号室 橘 遊(たちばなゆう) 「失礼します」 「おぉ和明君」 「和にぃ!!」 中から 槇原院長と遊が出迎えてくれた 槇原院長は もう50過ぎの おじさんだ なのに年も感じさせないくらい元気だ と感心していると 遊が俺に飛び付いた この笑顔も見れなくなるのかな 不意に涙がまた一つ零れ 遊のホッペに落ちて流れた 何故こんなに遊を大切に思うか… きっと きっと俺の妹に似てるからだろう… 俺の妹… 9才下の妹が いた 俺の妹も遊みたいな 病気にかかり 僅か10才で空へ旅立った あの時 俺は何もできなくて ただ弱って死に行くのを見つめているだけだった… 妹は最後までわがままを 言わなかった 何故俺はその時 妹のわがままを聞いてあげなかったんだ… 今でも 胸に罪悪感が募る だからだから 遊のわがままを聞きたい 叶えてあげたい 「かずにぃ…遊は知ってるよ」 「え?」 いきなりの遊の言葉に 我に返った 「遊は長生きできないって知ってるよ?」 「なんで…」 「槇原さんが言ってくれた」 すると槇原院長は泣きながら呟いた 「残酷なことかもしれませんが隠すなんて私にはできませんでした…」 2人が泣いてるのをみて 遊は 「もぅ2人共泣かないで」 と顔をしかめた はっとした俺等が悲しめば遊も悲しむ 今はグッと涙を堪え 遊に笑って見せた すると 遊もすぐに笑顔になった
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