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ピピピピ… ピピピ… ガチャン!! 「また同じ夢か…」 七海が死んでからというもの… 同じ夢を繰り返し見るようになった。 凄く暗くて、暗いんだけど、その深さまで分かってしまうほどの深い深い闇をずっとさまよっている。 「死んだ」と勘違いしてしまうような闇。 夢の中にも関わらず 「七海…寂しくなって俺を呼んでるんだよな…?いま行くからね。」 なんて独り言をつぶやいてしまう。 起きる度に「いっそこのまま目が覚めない方がいい」と何度も思った。 七海が死んで1ヶ月 いま思い返せば あの「死」から俺自身も「死」同然の生活だった。 仕事はよくミスるし。 生涯、一度も吸った事なんてなかったタバコも始めた。 会社も偽って欠勤していて… いま考えればよくクビにならなかったななんて思う。 後から聞いた話だと、会社が恋人を亡くした事を聞き、ある程度考えてくれたらしい。 やっと出勤した時は… 「厚木、クビギリギリだぞ!!今日からはしっかり働いてくれよな!!」 なんて厳しい中にも優しさがある言葉を部長にかけられた。 でも… 大切な人を失った気持ちは簡単に拭い去れなかった… 家に帰ればテレビもつけずに、ソファーに横たわってため息をつく。 静かな部屋に、遠くから聞こえるパトカーのサイレンの音だけが響いていた。 そのまま俺は眠りにつく。 そして同じ夢を見る。 その繰り返しを何度も続けた。 そのまま時は過ぎて、6年の月日を経た。 「早いもんだなぁ…」 ボソッと喋ると白い息がフワッと出た。 あの年の11月はこんなに寒かったっけ…? そんな事を思いながら車のエンジンをかけ、帰宅した。
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