なんとなく…

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ピピピピ… ピピピ… ピピ… カチッ!! どんどん間隔の短くなる目覚まし時計 それを止めることから俺の朝は始まる。 満員電車…乗り継ぎ… 毎朝毎朝、1時間以上かけて会社に向かう… そんな毎日… 「それでいい」 誰だってそう言い聞かす他ないだろ? 言い聞かすしかやってく方法ねぇって… あ、紹介忘れてたっけ…俺の名は『厚木浩介』 しがない商社マンだ。 高校は野球の名門 そこでエースで4番を打っていた…エースで4番なんて憧れの的だったよな。 でも甲子園まであと一歩と迫ったとこで惜しくも敗退した…。 思えば栄光時代もここまでだったんだよな…。 それからは大学に進んで野球部に入ったけど、途中肩を痛めて退部した。 就職活動はある程度楽だった。 「高校時代、野球で甲子園まであと一歩だったんです。」 とか 「途中で肩壊しちゃったので泣く泣く退部してしまいましたが…もちろん大学でもやってました。」 とか元気に言っちゃえば面接のつかみはOKだ。 あとは文章づくりは慣れてる手前、志望動機なんざ何とでもなる。 そして就職したのは世間に名のしれてる商社。 まぁ優良企業ってやつ? 老後の安定の八割は保証された …はずだった。 「厚木!! 昨日の接待で取引先の方に何したんだ!! 今朝、先方から連絡があってカンカンだったぞ!! 俺が謝ったから何とかなったけど… 相手は優良取引先なんだぞ!! 取引をもうしないなんて言われてみろ!! 我が社にどれだけダメージになるか!! 恥を知れ恥をっ!!!!」 さっきから怒鳴ってるのは営業部長の田所さん。営業部配属の俺の上司だ。 その人に対して俺は 「朝からうるせぇジジィだなぁ… そんなに怒鳴ってると早死にすんぞ(笑)」 なんて言えない…。 ひたすら 「すいません」 は言うけどね。 そして書き慣れた始末書を書く。これの繰り返し…。何度繰り返した事やら…。 まぁ無理もない… 接待のつもりが自分が酔っぱらいすぎて、取引先の部長の頭をビール瓶で小突いてしまったのだから… 小学生の時だったかな 同じクラスの亜紀ちゃんのスカートをめくって泣かせちゃった時 先生にノート1ページ分びっしりと「もうしません」って書かされた。 ふとそんな事を思い出しながら始末書を書き終えた。
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