もう一つの別離

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とある街の小さなセレモニーホール。 白と黒の幕に囲まれたその場所に、喪服姿の人がたくさんいた。 「浩介。」 振り返ると、部が一緒だった沢村 豊(さわむら ゆたか)が立っていた。 「おぉ、豊か。」 俺がそう言うと、豊は辺りを気にしてから俺を物陰に誘った。 「ちょっといいか?」 「え?」 物陰に行くと、もう一度辺りを見回して、話始めた。 「浩介は辻が何で亡くなったが知ってるか?」 「いや… まだ聞いてないけど… 病気か何かか?」 豊はそれを聞くと首を振ってから答えた。 「自殺だよ。」 一瞬にして俺の時が止まった。 その時、ふと同窓会が始まる前に流した"辻の涙"や辻の"不可解な発言"を思い出した。 お… い… おい… おいっ… 「おいって!! お前聞いてんのかよ人の話!! 俺は同窓会行けなかったからよ… お前行ったか? 行ったなら辻と会っただろ? 何か変わった様子とかなかったか?」 「…いてたよ…。」 俺はあ然とし過ぎて、豊に届くか届かないかくらい細い声で言った。 「えっ?なんだって?」 当たり前だが、豊は聞き返した。 「泣いてたよ…」 改めて声を張って言うと、それを聞いた豊は一瞬驚いた顔をして、すぐに肩を落とした。 後悔のウズが俺の周りを巡った。 あの時…。 あの時少しでも気づいてやれたなら…。 こんな事にならなかったのに…。 「お前は死ぬなよ!!」 「七海さんの分も生きなかったら承知しねぇぞ(笑)」 一つ一つアイツの言ったセリフを思い出すと明らかに"不可解な発言"だった。 なのに… なのに俺は… 「辻の元気な姿見たら、まさに今""自殺""しようとしてる人だって生きたいと思っちまうよ(笑)」 なんて… 言っちまった… 俺は馬鹿だ…。 本当に大馬鹿野郎だよ…。 辻…。ごめんな…。
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