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後から聞いた話だが
辻は首を吊って亡くなった。
理由は同僚の借金を肩代わりしてしまい多額の借金を背負った事だった…。
同僚には逃げられ、利息がついた多額の借金を返しきれなくなり悩んでいたと、辻をよく知る知人が言っていた。
お人好しの辻らしいと言えば辻らしいが…結果が良くない…。
「何も自殺なんか…」
豊がボソッと漏らしていたが、それはあくまで他人の意見。
実際に我が身に降りかかれば、自殺を考えてしまうのは無理もないのかもしれない…。
どちらにせよ、俺は辻の悩みに気づいてやれなかった後悔の念でいっぱいになっていた。
七海を失って6年の月日が経ち…
また一人大切な人を失ったショックと…
自分が殺したといってもおかしくない状況が…
俺を奈落の底におとしいれた。
「辻…。」
棺桶の中で眠ったように横たわっている辻を見て、疑心がいよいよ確信になった。
悲しみがこみ上げてきて、胸が痛くなるのが分かった。
葬式もしめやかにとり行われて、豊と共に辻の両親に挨拶をして帰路についた。
「なんか2人との再会が、最悪な形になっちまったなぁ…」
豊は悲しそうに眉を下げて続けた。
「お前とは葬式…。
当の辻は棺桶の中だもんな…。
こんな会い方は想像もしてなかった…
…と言うよりこんな再会なんか想像なんかしたくなかったよ。」
そう言うと、豊は涙をぬぐった。
「石中の最強二遊間(セカンドとショートの意味)は俺と辻!
これで決まりだったもんな!!」
そう言うと、豊は投げる真似をして見せた。
「な!浩介!!」
豊は返事のない俺を不思議に思ったのか、俺に同意を求めてきた。
「あ、あぁ…そうだな。」
俺は不意な振りに、動揺して答えた。
「どうしたんだよ、浩介」
豊は心配そうに俺を見ながら言った。
「う、うん…」
「何だよ。」
「俺が…俺が殺したようなもんだよ辻を…」
俺が気づいてやる事ができたら…辻の自殺を止める事が出来たのに…
俺はそんな気持ちでいっぱいだった。
「…バカ野郎。今のを辻が聞いたらあきれてるぜきっと…
そうだなぁ…立ち話もアレだし、清めの一杯でもやろうぜ」
豊にうながされるまま、俺たちは居酒屋に入った。
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