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それから豊と別れ
家に着いたときには日をまたいでいた。
「もうこんな時間か…」
そうつぶやくと体が一気に重くなるのが分かった。
俺は喪服のままベッドに倒れ込んで眠りについていた。
七海と辻…。
本当に大切な2人だった…。
七海の笑顔。
辻の冗談。
また、見たい。
また…2人の声聞きたいよ…
俺はふとこぼれ落ちた涙で目が覚めた。
時刻はAM4:07…
冬の朝方はさすがに寒かった。
喪服姿のまま寝た俺の体は思いっきり冷えきっていた。
「2度寝したらヤバいな…」
そう思って喪服を脱ぎ、スーツに着替え直した俺は仕事の時間までくつろぐ事にした。
ソファーに座り
タバコに手を伸ばした時ふと、あるシーンを思い出した。
「ゴホッゴホッ!!
タバコ吸ってる人きら~い。
こーちゃんは吸わないでね♪」
七海はタバコを嫌った。昔、小児喘息をわずらって以来ダメになったらしかった。
「吸わねぇよ(笑)
バリバリのスポーツマンですから!!」
俺は七海の前で得意ぶる事が多かった。
凄く好きになった女性だったし、頼もしいところを見せつけたかったからだった。
でも、その時の七海は怒って怖い顔をして言った。
「ダメ!!
スポーツマンとかそういうんじゃなくて体に悪いから!!
だからこーちゃんは絶対に吸っちゃダメだよ!!」
今考えれば…
まるで七海はこうなる事を予測しているようだった。
俺はタバコに伸ばした手を一旦は戻して、またすぐにタバコを掴みグシャグシャに丸めた。
「やめよう…。」
俺は七海の怒り顔がスッと笑顔に変わった気がして少し嬉しくなった。
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