1-1 「お気の毒です」

1/1
335人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ

 1-1 「お気の毒です」

 産声をあげるはず…でしたが、正確にはあげませんでした。    個人病院ではずっと「双子」と診断され、薬も飲んでいたようです。しかし実際に産まれたのは、双子ではなく、私一人だけでした。   (のちに私の病気のことで、原因の話になったとき、母は双子と信じて疑わなかったことと、薬を飲んでいたことが私の病気の原因と思い込み、苦しむことになるのですが、それは後のこと…)    誤診…がどう影響したのかは結局神のみぞ知る、ですが、とりあげた助産婦は、赤ちゃん(つまり私)の異変にいち早く気づきました。全体的に弱々しく、皮膚が異常にしわしわなのと、手と足指の異常、変形です。    「どんな病気かわかりませんが、当院では対応できませんので、すぐに大きな病院に転院です」    静かに、それでも有無を言わせぬ口調で院長先生は父に言いました。産まれたらすぐに対面でき、抱っこできると思っていた母は、赤ちゃんがそのまま転院してしまい、大きなショックを受けました。    赤ちゃんが産まれれば誰からも「おめでとうございます」なのに、お医者さんはじめ看護師さんからは「お気の毒です…」だったそうです。今も母の心の傷になっています。
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!