第六章・―決戦の時―

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 その姿を認めたアルミラが一礼するのを見て小さく笑うと、穏やかな声音で問いかけた。 「どうしました、ティリス姫」  ティリスには既に幾つかの策を伝えてあるので、今朝は最終確認にきたのだろう。 「今晩の事、大丈夫よね」  彼の考えた事なので信頼はしているが、それでも少し不安らしい。 「えぇ、それはもう。準備万端整えているつもりなのですが。何か不安なのですか?」  そう言っている間も彼は肩を震わせ、笑いを堪え続けている。  余程ティリスの不安な表情がおかしいのか、それとも何か他の事に対して笑いを覚えたのか、ティリスにもアルミラにも分からないでいる。  だが彼の変わりない優しい雰囲気には、何故だか無条件で安堵を覚えるのだ。 「もう。カイルったら……」  久し振りにやってきた日常に、二人で笑みを浮かべながら顔を見合わせると、やれやれとばかりに肩をすくめてからティリスが口をひらいた。
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