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「大丈夫。逢う前に心の準備が必要だからと、時間をおいて訪ねてくれるよう言ってくれれば、後は俺とゼルが引き継ぐから」
ティリスには、本人の口からそう言ってもらえるだけで充分に役目を果たしているのだと、念を押す形で力強く頷いた。
「本当に……。大丈夫よね……?」
だが、はっきりとした言葉を聞いても尚不安なのか、優しく笑う彼を上目遣いに見ながらティリスが同じ質問をする。
目的のためには手段を選ばない、そんなシュトルツの性格と強引さを考えれば仕方のない反応だと言えようが、再び頷く彼を見てようやく信用したのか、ティリスは安堵のため息を吐いた。
「それでは姫君、私はまだ、準備が残っておりますので」
彼がそう言いながらドアの前まで歩いて行き促すと、ティリスは初めて気付いたようにして言った。
「あ、御免なさい。それじゃあ、私はこれで失礼します」
珍しく素直に対応するティリスを促すために、ゆっくりとドアを開ける。
素直に従い出て行く間際、ティリスは彼の方を一瞬見てにっこり笑ったのだった。
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