第六章・―決戦の時―

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 全てが寝静まった薄暗い廊下で、何かを忍ぶように一つの影が動いている。  影は焦っているのか、周囲の様子を確かめながらも足早に歩いていた。  長く続く廊下を、なるべく足音を立てぬように歩いて行き、とある部屋の前で立ち止まる。  そこが目的地であるのだろうが、何故かノックはせずに中の様子を確かめるようにドアにぴったりとくっつくと、影はしばらく動かなくなった。  どうやら部屋の主に用があるみたいなのだが、それにも関わらず公に訪問するつもりもないらしい。  何かを企んでそうしているのか、とにかく影は誰にも気付かれないよう気配すら完全に消し去ってここにいるのだ。  中からは何の音もしなかったようで、取り敢えずドアから身体を離すと最初は普通に、ノブに手をかけてゆっくりと動かそうとする。
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