第六章・―決戦の時―

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 明るさに怯んだ影の正体はシュトルツであった。  やはり罠であったのかと悔しげに舌打ちすると、眼前に立ちはだかっている相手を睨みながら言い放つ。 「……これは貴様の差し金か、カイル=グランデ」  シュトルツも何処かでは罠である事を承知していた節があるが、明朝には帰国しなければいけない焦りが油断を生んだ。 「シュトルツ王子、この部屋に何か御用でしょうか」  対する彼が、シュトルツの悔しそうな声音にも構わずに、そ知らぬ顔でそう返すのに益々不満を募らせたようだった。  会話を続けながらもいつでも攻撃出来るようにと、体勢を整えながら返す。 「何の用かだと? 笑わせるな。貴様の算段でこの部屋に私を呼び込んだ事は理解っているのだ。この私をこのような罠に嵌めて、一体どういうつもりなのかと聞いている」  言いながらシュトルツはゆっくりと、脇に差している剣に手をかける。
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