第六章・―決戦の時―

29/33
前へ
/215ページ
次へ
「ならば試してやる。本当に私の敵に相応しいかどうか、ここで見事に勝って見せろ、カイル=グランデ」  自らの手で怪我を負わせているのを忘れてはいない筈で、それが彼にとってはかなりのハンデになると承知の上での勝負を挑む。  正々堂々と勝つ事こそが、二人にとっての矜持でもあるのだ。 「承知致しております」  彼の言葉を合図に二人同時に刃を弾くと、お互い二三歩後退して対峙する。  そうして再び沈黙が降りた。  剣を構え、シュトルツも彼も、片時も視線を離さずに時が過ぎる。  先に動いたのは、またしてもシュトルツの方だった。  シュトルツは一歩大きく踏み出すと、彼の頭上へと剣を振りかざし襲いかかった。  彼もそれに対応し、二度刃を交わすが案の定シュトルツから負わされている怪我が災いして、徐々に壁際へと追い詰められて行く。
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1810人が本棚に入れています
本棚に追加