第六章・―決戦の時―

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「分かった……! 今回の勝負、貴様の真意を読みきれなかった私の負けだ。これでも私も王家の血を引く者。約束通り大人しく引き下がろう」 「ありがとうございます」  態度こそ尊大ではあるが、最初にした宣言を覆す事なくそう口にすると、先刻までまとっていた殺気も消し去ってしまう。  こうして自ら置かれた立場を利用する事もせず、潔く負けを認めるところはやはり誇り高い気質の持ち主なのだと、シュトルツへの認識を良い方向へと改める。  勝負がついたのを機に大きくため息を吐くと、本当の意味で好敵手だと認めると放つ代わりに続ける。 「だが次はこうはいかん。……カイル、今度逢う時は、今よりもっと強くなっておけよ」  彼がそれに応えるようにして頷くいたのを見て、それ以上はこの場にいる意味がないとでも言う風に身を翻すと、颯爽と部屋から去って行った。
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