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あくる朝早く、シュトルツは訪問時と同じく人目を忍ぶように、一人サウスパレス王国を後にした。
門兵には事情を話して持ち場を離れてもらっていたので、まさに対峙する形となる。
そうしてシュトルツは大事な話をするのを忘れていたと、首を傾げる彼に対して目的を完遂させるためとはいえ、怪我をさせた一件を簡潔に謝罪するだけで会話を終える。
それからは長居もしたくないという風に、目も合わさずに門扉を潜ると、一切振り向かずに帰国したのだ。
シュトルツを見送った彼はその姿が見えなくなるまで見届けた直後、まるで糸が切れるようにしてその場で倒れ、意識不明の重体に陥った。
その後は意識が戻る気配もなく、熱に浮かされながら三日三晩生死の境を彷徨う事となる。
そしてようやくの事で、容態も落ち着いた四日目の深夜――。
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