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ーー誰かに呼ばれた気がしてふと目を覚ました彼の視界に入ったのは、見覚えのある薄暗い天井だった。
さすがに自分がどうなってここにいるのか、すぐには状況を把握出来ず、視界を闇に慣れさせながらゆっくりと周囲を見渡す。
寝かされていた場所はやはり執務室の隣にある寝室のようで、最後の記憶まで辿ってみる。
シュトルツを裏門まで案内し、姿が見えなくなるまで見送ったのだが、そこからがどうしても思い出せない。
それで怪我の深さに耐え切れず、意識を失い倒れてしまった事にようやく思い至った彼の口から、深く長いため息が出る。
あまり確認はしたくないのだが、逃げてばかりでもいけないと脇腹を探ると、確かに誰かが手当てをした後があった。
確実に周囲の者に迷惑をかけたのだと悟ると、再び大きなため息を吐いて寝返りを打つ。
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