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するとタイミングを計ったように、頭上から囁くように降ってくる声があった。
「……カイル、目が覚めたかな」
「あぁ」
誰の姿も見えないが、確実に知っている声は彼の事を心配しているようで、束の間沈黙する。
「大丈夫だよ。心配しないでくれ。もう目は覚めた」
彼の方も、何の疑問も抱いていない様子でそう答えると、自嘲気味に続ける。
「どうやら気を失ったらしいな。……我ながら情けない」
「そのようだね」
色んな意味を込めた声音で同意するのだが、不思議とそこに咎める色は含まれていない。
それどころか自責の念を抱き、ふざけた態度を取るのを自重しているようにさえ思えるのだ。
彼もそう感じているのかしばらく沈黙すると、仰向けになってため息を吐きながら、やけくそのように放つ。
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